ピアノのコラム
アップライトピアノ編
楽器の王様といわれる「ピアノ」。
ピアノとひとくちに言っても、グランドピアノ・アップライトピアノ・電子ピアノ…
と色々あります。
お客様の用途・目的、ご希望に応じて、それぞれお薦めする内容も違ってきます。
ピアノ購入の検討に際して、ちょっと参考になるコラムです。
アップライトピアノって
どんなピアノ?
グランドピアノのコラムにも書いたのですが、本来のピアノとはグランドピアノのことを指します。ただ広く一般的にと考えると【ピアノ=アップライトピアノ】というイメージになるのではないでしょうか。
はじめてのアップライトピアノがいつ誕生したのか正確にはわかりませんが、19世紀に入りピアノが徐々に一般的なものとなる中で、スペースの都合から作られるようになったようです。当時のヨーロッパでは、グランドピアノをそのまま立てたような形で、とても背の高いジラフピアノ(キリンピアノ)と呼ばれるようなピアノが作られていました。横面から立面にスペースが移行したわけです。
皆さんがイメージされるピアノとはずいぶん違った形であることがお分かりいただけると思います。
1800年にはアメリカ・フィラデルフィアのジョン・アイザック・ホーキンズが、現在のアップライトピアノに近い形のピアノを製作しました。当時も今もスペースは貴重なもの。ホーキンズにより改良されたアップライトピアノは場所をとらないという利点から、幅広く普及するようになったのです。
皆さんがイメージされるピアノとはずいぶん違った形であることがお分かりいただけると思います。
本来の形であるグランドピアノとの比較をすれば、鍵盤操作性、音量・音色・ダイナミックレンジ・音の減衰等々において様々な違いはあるものの、アップライトピアノの誕生により、一般家庭におけるおけいこや趣味に、また 幼稚園や小学校などの教育の現場でも幅広く愛用されることになったので、まさに世紀の大発明と言っていいのではないかと思います。
背の高さは、なぜ違う?
グランドピアノに様々な奥行サイズのものがあるのと同様、アップライトピアノの背の高さにも、いくつかのタイプがございます。
先ほどジラフピアノ(キリンピアノ)をご紹介しましたが、グランドピアノをそのまま立ててしまったような形であることがご理解いただけると思います。これにより平面でのスペースは少なくなりましたが、垂直面でのスペースで考えるとお部屋の高さを必要としますし、安定感・バランスといった観点からは問題があったものと想像できます。よりコンパクトに、よりいい音で・・等々といった様々な改良は絶え間なく続けられ、その結果として私たちが実際にイメージ出来る現代のピアノの形に至っているのでしょう。
現代のもっともスタンダードな形のアップライトピアノの背の高さは130cm程度です。日本でもっともメジャーなブランドであるヤマハの中で一番人気のアップライトはU3型(現在のYU33・YUS3など)で、その背の高さは131cm。世界3大ブランドと呼ばれるピアノメーカーのピアノも同様で、スタインウェイは132cm、ベヒシュタインは131.5cm、ベーゼンドルファーは130cmといったように、各有名メーカーが、最も自信を持っておすすめするアップライトピアノの背の高さはほぼ同じです。
世界にはその他にも様々なメーカーがありますが、どのメーカーも同様とご理解いただいて結構です。
各メーカーのアップライトピアノには様々な背の高さのシリーズがあり、最もおすすめなのは130cm前後、続いて120cm前後、デザイン性を強調したコンパクトな110cm前後というラインアップが一般的です。 ヨーロッパや日本では、このような背の高さのラインナップですが、アメリカマーケットでは100cm程度の極端に背の低いデザイン重視型ピアノもあり、ピアノに対しての価値観(音なのかデザインなのか?)や国民性といったこともそこには表れているようです。
背の高さが違うと、何が違う?
ずばりピアノから発せられる音に違いが表れてきます。
コンサートホールに置かれるグランドピアノの奥行は、大体 2m70cm~2m80cm程度。ピアニストが演奏会やレコーディングに使用するピアノです。このサイズこそが理想的なピアノのサイズという訳ですが、自宅にこのようなサイズのピアノを置けるスペースを有する事自体が、極めて稀な事なので、一般的には180cm~2m20cm前後のサイズのグランドピアノが置かれるケースが多いものと思われます。
スペースの都合から、奥行の短いグランドピアノが作られるとともに、さらにスペースを求めていく中で生まれたのがアップライトピアノです。
グランドピアノが奥行サイズにより音に違いが出ることと同様、背の高さが違うことにより、張られる弦の長さや、ハンマーで叩いた弦の音を増幅する役目を持つ響板の面積が違ってくるため、音のボリューム感や伸び、深みなどに大きな差が出てきます。背が高いとその分ダイナミックレンジ(音の強弱の幅)が大きくなるので、より一層、表現力が豊かになってきます。
例えれば、色鉛筆や絵の具。赤い色を描こうとした時、赤とひとくちに言っても様々な赤色がありますよね。
背が高いピアノほど、この赤色のバリエーションが増えるといったことでイメージいただけますでしょうか。あるいは軽自動車と高級セダンといった自動車での比較。走るということは同じですが、走り出しから走行安定性、 乗り心地等々、はっきりと体感出来る違いがあります。
ピアノの面白さは表現力。様々な表現の可能性を持ったピアノかどうか。
発表会やコンサートなど、同じ会場・同じピアノでも演奏者が変われば音に違いが表れます。明るく華やかな音から重厚で深い音、悲しみに満ちた音など、演奏者が求める音にピアノが反応してくれるからです。
日頃、最も弾くピアノはご自宅にあるピアノ。そのピアノが幅広い表現力を備えたピアノであればあるほど演奏者は、発表会やコンサートの本番で、幅広い表現力や個性を発揮出来るということにつながってくるのです。
背の高さによる表現力の違いについては、ご試弾・ご試聴することで体感できると思います。
ご来店の上、ぜひ納得の1台に出会っていただきたいと思います。
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