中川つよし講師監修のもと、リコーダー職人徳永隆二氏が製作をてがける宮地楽器オリジナルリコーダー。
今年は2年ぶりとなる新機種、デンナー・モデルのバロックピッチアルトリコーダーが誕生します。
材質も2種類ご用意いたしますので、性格の異なる二つの新しい音色をぜひ会場でお試しください。
今回、設計の元となったリコーダーは、ヤコブ・デンナー作で、ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージック所蔵の、ヘッドとフットに装飾が施された総象牙のリコーダーです。
バロック時代のオリジナルリコーダーのピッチは、A=405~410Hzが多いのですが、設計の元となったリコーダーのピッチは417Hzで、現在のバロックピッチの415Hzとほぼ同じです。
ヘッドは他のオリジナルと比べて少し太く、そして円筒です。テーパー*がついていません。
ミドルとフットは少し細く、フットはかなり絞られ、その後ラッパ状に広がります。図面を描いた時、はたしてこのような内径で大丈夫かと一瞬思いましたが、信じてリーマー(内径を削る工具)を製作したところ、全く問題はありませんでした。
(図-1)は内径を比較したグラフです。いずれも設計値ですが、それぞれのリコーダーで内径に特徴があることが見てとれます。特にデンナーは大きく違っていますね。
*テーパー:徐々に細くなること。リコーダーでは内径が徐々に細くなることをいう。
指孔径は他のオリジナルリコーダーに比べて少し小さめです。
また、アンダーカットもそれほど大きくありません。
比較のため、最終的な指孔径設計値を<表-1>に上げておきます。
全体的に細めです。歌口部はかなり絞られ、見た目がアヒルぐち形状になっています。フットの先端も細めです。
内径 → ほぼオリジナルどおり
外形 → 全体のシェイプを崩さない程度に、オリジナルよりも少し太め。装飾なし。
指孔 → ほぼオリジナルどおり
オリジナルは象牙ですが、象牙を使用するわけにもいかないので、リコーダーの材料の中では重めのグラナディラを採用しました。また、宮地楽器オリジナルリコーダーでよく採用され、実績のある御蔵島黄楊もラインナップに加えました。グラナディラとは違った吹き心地をお楽しみ頂けると思います。
ここで一つ皆さんに有益な情報です。現在グラナディラは、とても入りにくい材料になっています。今のうちにこのフェアで宮地楽器オリジナルのグラナディラ製デンナーを手に入れることをお勧めします。
これまで、宮地楽器オリジナルリコーダーとして、ステンズビーJr.、ブレッサン、ステンベルゲン、テルトンソプラノと、A=415Hzのリコーダーを設計し作ってきました。
今回のデンナーは、結論から言うと、とても簡単に作れました。
ただし、これまで設計してきたリコーダーとは内径が大きく違っていたので、試作第1号を作って音を鳴らすまではとても不安でした。修正点がなかったとは言いませんが、殆ど問題なく完成したのです。
正直、楽にできたのですが、逆にリーマー製作に取りかかるまで、他のリコーダーを設計するとき以上に試行錯誤し、本当に大丈夫かどうかを検証する事に多くの時間を費やしました。
皆さん、リコーダーの優等生(私はそう思っています)であるデンナーを、宮地楽器オリジナルのデンナーで楽しんでみませんか。
宮地楽器オリジナルリコーダーデンナー・モデル発売に伴い、他メーカーのデンナー・モデルも多数展示を予定しております。
中でも通常は完全受注生産となる竹山の2機種は必見です。
新機種に加え、メーカーごとの違いもぜひお楽しみください。
主軸商品がデンナーモデルであるモーレンハウエルですが、特にお薦めしたいシリーズが『DENNER-EDITION』です。サテンウッドという軽い材を使用した品番が特に人気で、軽やかな吹き心地と甘くふくよかな音色の両立を果たしています。
◆DE-1211 | ¥258,500 | サテンウッド |
◆DE-1211D | ¥269,500 | サテンウッド/ステイン |
◆DE-1214 | ¥291,500 | グラナディラ |
メックではデンナー・モデルは高級ラインナップに位置付けられており、良質なボックスウッドとグラナディラを贅沢に使用しています。メックらしい力強い芯のある音色が特徴です。
◆5334 | ¥277,200 | ボックスウッド |
◆5338 | ¥357,500 | グラナディラ |
通常は完全受注生産品の竹山デンナー・モデルより、エボニーとヨーロッパ黄楊の実売品をご用意いたします。
限定各2本となりますので、お早めにお問い合わせください。(※竹山デンナー・モデルはバロックピッチのみのご用意となります。予めご了承くださいませ。)
◆DA415E | ¥220,000 | エボニー |
◆DA415FB | ¥254,100 | ヨーロッパ黄楊 |
※ラインナップはすべてバロックピッチ(A=415Hz)ですが、会場にはモダンピッチ(A=442Hz)のものもございます。
A=415Hzのバロックピッチリコーダーについて、
そのピッチの由来や、モデルごとの違いについては意外と知られておらず、
「なんとなく使っている・・・」という方も多いかもしれません。
今回はそんなバロックピッチリコーダーについて、今一度わかりやすく解説いたします!
リコーダーが最も活躍したバロック時代の楽器が、A=403~417Hzくらいのピッチで作られていたからです。
当時は国や楽曲によってピッチはバラバラだったわけですが、現代ではA=440Hzよりもちょうど半音程度低いA=415Hzがバロック音楽の標準音として広く認識され、それに合わせてリコーダーもA=415Hzで作られています。
A=440Hzまたは442Hzであるモダンピッチに比べると半音程度下がるため、まずはそれだけで落ち着きのある音色になります。
また、管体はモダンピッチのものよりも長くなりますので、響きにも豊かさや奥行きが生まれます。バロック時代当時に貴族たちの前で悠々とソロを披露していた楽器であることにも納得がいくでしょう。
バロック時代には音楽は貴族たちを中心に流行し、楽器製作においてもより良い音色を求めて様々な工夫が成されていた時代でした。そのため、当時はリコーダー専門の製作家も多く、沢山のモデルが誕生することになったのです。
また、バロックピッチの範囲が広かったのは、「この楽器にはこのピッチでこそ良い音がする」と、都度楽器に最適なピッチを模索していたこともその要因の一つにあります。
見た目はもちろん、音色、吹奏感も異なります。ここからは宮地楽器オリジナルリコーダーで再現されている楽器に沿って、5つのモデルの特徴を解説します。
イギリスで生まれ、イギリスで活躍したリコーダー製作家。ソプラノからバスまで数多くの名器を残し、文献にも度々登場する人物です。彼はリコーダーのストラディバリウスとも称され、その楽器の上品な深い音色はリコーダーファンにとても人気があります。
アムステルダムのリコーダー製作家。リチャード・ハーカに師事し、24歳の時にはアムステルダムの広報誌に紹介されるほどの評判でした。その楽器の音色は甘く軽快な響きで、名リコーダー奏者として名高いフランス・ブリュッヘンも晩年にはこのステンベルゲンの楽器を愛用していたことで有名です。
オランダのリコーダー製作家。ステンベルゲンと全く同時期を生きています。彼の楽器は現存するソプラノリコーダーがとても有名で、銀の装飾をあしらった美しい外観も相まって、「ソプラノリコーダーといえばテルトン」というほどの人気を博しています。低音から高音までのバランスが良く、艶のある音色が特徴です。
ニュルンベルクのリコーダー製作家。クラリネットの発明者として有名なヨハン・クリストフ・デンナーの息子ですが、彼自身もリコーダーの歴史に大きな功績を残すことになりました。その楽器は優れた高音域の響きと豊かな倍音を備えており、吹奏感もよく、音色と機能性の両面で高く評価されています。
ロンドンのリコーダー製作家。リコーダーやオーボエの製作家である父に習い、当時から一目置かれる存在でした。また、40歳のときにはリコーダーの衰退を危惧し、新しい運指を発表するなど、生涯にわたりリコーダーに熱を注いだ人物です。楽器は抜けるような吹奏感と、明るく伸びやかな音色が特徴です。
宮地楽器小金井店はJR中央線武蔵小金井駅より徒歩3分、東京多摩地区最大級の楽器店ショールームです。
ヤマハピアノ、ヨーロッパピアノ(海外輸入ピアノ)からエレクトーン、電子ピアノなどの鍵盤楽器および、直輸入の新作イタリアンをはじめとした国内外の弦楽器、管楽器の初心者向き入門モデルから上級者向きハイクラスモデル、リコーダーを豊富に展示。試奏室完備。
TEL 小金井店ショールーム 042-385-5585