新作の製作過程や、日常での出来事など、
高橋 明さんがクレモナから
近況を届けてくれています。
2025.03.01 クレモナより高橋さんの近況をお届けします♪
すこし間が空いてしまいましたが、クレモナの高橋明です。
毎日、同じ楽器製作の繰り返しばかりで、工房だよりに書くような新しいネタがなくて大変です。(笑)というわけで、現在行っている作業をご紹介します。
現在私は新作ヴァイオリンの表板・裏板の膨らみ(隆起・アーチング)の仕上げを行っています。
ヴァイオリン族の表板・裏板はなだらかに膨らんでいますが、この膨らみは熱で曲げているのではなく、分厚い板から削り出して作られます。まずは丸ノミで荒削りをして、小さい豆鉋を使って成形していき、スクレーパーなどで仕上げをしていきます。
美しくて音響のよい隆起を作るのは何度やっても難しいですね。木なので、もちろん削りすぎたら取り返しがつきませんし、全体的に少しずつ削り取っていって、自分の理想になるように形作っていきます。
この時、製作者は工房を真っ暗にして、電気スタンド1つの灯りだけで作業をします。こうすることで、木の表面の微細な凸凹を見つけて修正していきます。
写真は、隆起の仕上げが終わったところ。最終的に、なめらかで玉のような膨らみが表れてきます。まるで風船が膨らんだときのような感じです。ふわふわでおいしそうでしょ?!
そうそう、まるで同じように見える表板と裏板の隆起ですが、微妙に違うのですよ。詳しくは直接私に聞いてくださいませ!(笑)
(高橋明)
2024.11.01 高橋明さんより、トリエンナーレコンクールの報告が届きました♪
前回の菊田さんが書かれたトリエンナーレの記事の続きです。
私も菊田さんと同じくヴァイオリンとチェロで参加しました。
結果は私も菊田さんも残念ながら入賞できなかったわけですが、採点結果を分析してみると、なんとヴァイオリンもチェロも菊田さんと順位が隣どうし! 思えば、2015年にはビオラで隣同士、2021年にはヴァイオリンで隣同士でしたので、今回で4回目の奇跡になりますね。毎回菊田さんには勝ったり負けたりですが、今回はどちらも数点差で菊田さんに負けてしまいました!でも技術点では負けたけど、音響審査ではどちらも勝った~!!そんな感じで3年に一度のクレモナのお祭りさわぎ、一喜一憂して楽しんでおります。でも、結果うんぬんではなくて、より全体的に見て勉強することが大事。今回もいい勉強になって、また次回からの製作に反映していけたらと思っております。なおトリエンナーレに参加したこのチェロは、宮地楽器小金井ショールームで展示販売されております。ご興味ある方はぜひいらしてください。
(高橋明)
2024.09.01 3年ぶりのトリエンナーレに向けて!高橋明さんの投稿です!
今年は3年に一度に開催される、クレモナの国際弦楽器製作コンクールの年です。9月開催なので、夏のこの時期は多くの製作者が追い込みをしています。
私もその一人。ニスの仕上げをしています。表板の木目を浮き立たせるために、木目一本一本を細い筆でリタッチしていきます。メガネに老眼鏡とルーペを重ねた三重苦!
すごく根気が必要で時間のかかる作業なのです。
ニスに悪影響を与える扇風機を使えないので、真夏の暑い中での作業は大変です。
間に合うのか~?! 焦る~!!
まさに夏休み最終日に宿題に追われる小学生の気分!
自作のTシャツを着て、作業がんばっています! 少し派手?
(高橋明)
2024.05.16 クレモナの高橋明さんより、心温まる記事をお寄せいただきました♪
今回ちょっと話題を変えての工房だよりです。
クレモナにある私と菊田さんの共同工房ですが、二階がテラスになっており、小さな小屋があります。
普段使っていないその小屋の中に野生の鳩が巣を作っております。
ちょうどこの時期、雛の孵化ラッシュです!
みなさん、鳩の雛って見たことないですよね。
鳩の卵は見た目は真っ白のニワトリの卵ですが、大きさはもっと小さいちょうどウズラの卵くらい。二個ずつ産む様です。
孵化したばかりの雛は黄色い産毛のヒヨコ。それがすこしずつ大きくなって大人の灰色の羽毛に生えかわっていきます。
2・3週間くらいで巣立っていきます。また帰ってこいよ~!
(高橋明)
2024.03.18 高橋明さんのコラムを掲載いたします!
現在宮地楽器小金井店に、特徴が際立った3台の私のヴァイオリンがそろいましたので、ここでご紹介させていただきたいと思います。
①2022年に製作した、ストラディヴァリ1710“ダンクラ”モデルです。このあとご紹介する“クレモネーゼ”モデルよりも少し小型で、女性にも演奏しやすいモデルです。プレーンな材料を使用しましたので、素直で明るく元気な鳴りが特徴です。演奏していて気持ちよく楽しくなるような作品です。
②2023年の前半に製作した、ストラディヴァリ1715“クレモネーゼ”モデルです。胴体が標準よりほんの少し大きめで、スケールの大きな深い音色です。演奏していて耳にキンキンこない落ち着いた音ですが、ホールの奥まで届く太く柔らかい音色が特徴です。私が理想とする音色に近いと思います。
③2023年の後半に製作した、これもストラディヴァリ1715“クレモネーゼ”モデルです。大きめの胴体による太くしっかりした低音と、蝶杢が入った表板のためにキラキラ輝くような高音が特徴です。材料のいいところをうまく引き出してまとめられたと思います。いろんな楽器のいいところどりできた作品です。
私の作品の中でも特徴が際立った楽器が3台揃うというのも珍しいことですので、ご紹介させていただきました。ぜひ弾き比べて違いを楽しんでいただいて、ご自分に合う音色を選んでいただければと思います。
(高橋明)
2023.10.16 高橋明さんより、モンドムジカの投稿です!
クレモナで恒例のモンドムジカ(クレモナの国際弦楽器見本市)が今年も9月22・23・24日に開催されました。私もALI(イタリア弦楽器製作者協会)のブースにて、最新作のヴァイオリン一台で参加いたしました。
この楽器、できたばっかりですが充実した明るい音が出て気に入っております。
ひょっとしたら宮地楽器小金井店で開催予定の日本人フェア(12月15・16・17日)で皆様に見ていただけるかも?!ぜひ手に取って弾いてみていただきたいですね。
(高橋明)
2023.07.16 「工房だより」高橋明さんの最新投稿です!
コロナ禍以前は毎年秋の弦楽器フェアに合わせて日本に一時帰国していたのですが、今年は数年ぶりとなる春の一時帰国ができ、2つの展示会に参加致させていただきました。まずは、5月2日・3日に大阪市中央公会堂で開催された第13回関西弦楽器製作者協会の展示会です。二つ目は、5月20日・21日に池袋の自由学園明日館講堂で開催された第18回日本バイオリン製作研究会作品展示会です。どちらの展示会も数年ぶりの参加となり、久しぶりにお会いできるお客様も多くて懐かしさでいっぱいでした。これらを糧に、またイタリアでよい楽器作りに精進していきます。
(高橋明)
2023.04.21 クレモナの高橋明さんが間もなく来日されます!!
春の催し物がいろいろ企画されている時期が近づいてきております。5月2日・3日に大阪中之島公会堂で開催される関西弦楽器製作者協会展示会と、5月20日・21日に池袋・自由学園明日館で開催される日本バイオリン製作研究会展示会に参加予定です。詳しくは私のブログまで。また、ゴールデンウィークに向けて宮地楽器に納入予定の新作ヴァイオリンも完成いたしました。久しぶりに蝶杢と呼ばれる模様の入った表板を使用しました。キラキラ輝く模様の美しさ、耳にキンキンこない、穏やかながら芯のある深い音に仕上がりました。宮地楽器小金井店で開催されるヴァイオリンフェアで皆様に見てもらえるかと思います。
(高橋明)
2023.03.01 クレモナの高橋明さんより、最新投稿です!!
先日、新作ヴァイオリンのf字孔の加工をしました。表板に描いたデザインをもとに下穴を開け、糸のように細い刃の糸鋸を使って切り抜いていきます。表板の木目に足を取られてあっという間に線をはみだしてしまうので、気を遣う作業です。どんな感じのf字孔になるのか、お楽しみです。
(高橋明)
2022.12.31 クレモナよりお越しいただいた高橋明さんより、先日のフェアについて寄稿して頂きました♪
12月2~4日に開催された宮地楽器小金井店のイベント「日本人製作家の饗宴」、大盛況のうちに終わりました。来ていただいた皆様、どうもありがとうございました。丸3年ぶりの日本帰国、そして日本でのイベントだけあり、すごく熱のこもったイベントとなりました。
それは同じく共演した9人の製作者としても、宮地楽器関係者としても同じで、小金井店にクレモナを再現するというコンセプトが実現していました。
(高橋明)