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ピアノ

ピアノを入手する前に

電子ピアノとの違い

アコースティックピアノと電子ピアノ、どちらを選ぶ?

ピアノは決して安いお買い物ではありません。
だからこそ「アコースティックピアノ(普通のピアノ)と電子ピアノ(デジタルピアノ)のどちらを選ぶべきか」は、とても気になるところです。
ピアノなどの指導に携わっている個人指導者のための組織 「 MTC(Miyaji Teacher’s Circle) 」 の一員でもある横田倫子先生にお話を伺いしましたので、ぜひご一読ください。
(対談者:宮地楽器小金井店ショールーム副店長 佐久間 彰)

アコースティックピアノと電子ピアノについて

※以下敬称略

電子ピアノでは表現できないことって?
横田:
アコースティックピアノ(以下ピアノ)は高い買い物ですから、電子ピアノを使っている生徒さんに 「持っていたほうが良いですから、ピアノに買い換えてください」とは、なかなか言いにくかったんですよね…。
佐久間:
”電子ピアノでは弾く時に難しいこと”は弾く様子を見ていると分かるものですか?
横田:
分かりますよ。電子ピアノを弾いているお子さんによく見られるのは、家では弾けるのにレッスンでピアノを弾くとしっかり音が出せないとか、特に弱いタッチの表現ができないようです。
そしてスタッカートの表現も。スタッカートにはスラーのかかったものやフォルテやピアノのスタッカートなどいろいろありますが、その弾き分けが電子ピアノではできないので、ピョンピョン跳ねるようなスタッカートしか弾けないことが多いんですね。
佐久間:
ピアノが弾けるようにと習いに来ているのに、自宅と教室の環境の違いからストレスを感じてしまうということですね。
結果的に上手になれなくて、ピアノがつまらなくなるというのは残念なことです。
横田:
親御さんがピアノを弾けなくても、レッスンを見ていれば、綺麗な音が出ているかな?とか、フレージングがうまくいっているかな?ということはわかるので、何が問題なのかが理解できます。そうするとお子さんにかける言葉も変わってくると思いますよ。
生徒には「お家では自分の耳が先生なんだよ」と言っていますが、特に小さいお子さんでは親の耳も先生ですよね。親御さんがレッスンをごらんになることはとても大事なことです。
何を買う?いつ買う?
横田:
小学校6年生まで電子ピアノを弾いていた生徒がいました。器用なお子さんでしたので、レッスンに来てしばらくピアノを弾いていると慣れるんですが、どうしてもクレッシェンド、デクレッシェンドが極端で、流れが不自然なんですね。ペダル操作も難しいようで、踏み替えのタイミング、踏む強さの加減がうまくいきませんでした。
そのお子さんがコンクールに出ることになったのですが、ほかのお子さんと弾き劣りしないようにと考えると、表現の簡単な曲を選ぶしかありませんでした。
「ヤマハのDUPシリーズを電子ピアノとは呼ばないでください」ってヤマハの方はおっしゃいますが、ペダルもピアノに近いんですか?
佐久間:
ヤマハのDUPシリーズやクラビノーバでも基本的には限りなくピアノのタッチに近づけた…というのがウリですし、ペダルもオン/オフだけでなくハーフペダルもできるといいますが、音色が変えられるわけではありません。 電子ピアノは、各社の最高機種のグランドピアノの音をサンプリングして音をつくっているので素晴らしい音色は出ますが、デジタル楽器ですから誰が弾いても同じ音が出るということなんですよね。
電子ピアノは使い方の要素がいろいろあるという面白さはありますが、ピアノの代用品にはなりません。あくまでも「ピアノ風」であってピアノの完成形ではないんです。活け花をする時に、造花では生花の代用品にはならないのと同じで、どうしてもレベルによっては表現の限界がきてしまいます。横田先生がピアノをすすめるタイミングは?
横田:
最初に「以前はピアノを買うことを勧められなかった」と言いましたが、実際には弾き始めて1年もすると電子ピアノでは出来ないことが増えてきて、買い替えるケースが多いんですね。
すぐに電子ピアノが不用になるくらいなら最初からピアノを使ったほうがよいので、今はピアノを持っていない方には最初からピアノを買うことを勧めています。
始める年齢にもよりますけど、年中〜年長さんでスタートするなら、たとえ中学受験のために小学校高学年でピアノを中断したとしても6年ほど弾くことになりますから、ピアノでレッスンをするほうがいいと思います。
3年ぐらい弾いていると「○○ちゃんってピアノが上手よね」と評判になったりするので、本人もその気になって続けることが多いですから。
佐久間:
そうなんですよね。お店に来られるお客様のなかには、いつまで続けるかわからないからとりあえず電子ピアノで…という方が多いです。ピアニストにしたいわけではないから、譜面が読める程度でいいとおっしゃる方も。
横田:
ピアニストでなければ譜面が読める程度…というのはちょっと極端ですよね。ピアノの専門家にならなくても趣味で続けるのでもいいと思うんです。ピアノはいつになっても弾けるので、大人になってまた戻れるならそれでいいと思います。上手になることだけが目的ではなくて「ピアノを通じて成長する」 という意味もあると思うんです。
集中力がついたり、文章がうまくなったり、数学が得意になったりというお子さんが実際にとても多いですよ。ピアノを弾いているお子さんは「やらなければ身につかない」ことをレッスンで実感するので、「言われたことはきちんとやる」というのが当たり前に なります。学校の宿題をやるなんて当然…という感じで。
佐久間:
どのくらい続ければ、ピアノを好きなまま大人になって、またピアノに戻ってこられますかね。
横田:
ピアノを楽しむにはある程度のレベルまで到達しているほうが好きなままでいられると思います。そういう意味では中学生まで続ければ、もし別の楽器をやったり、志向が変わってスポーツなどに進んでも、何らかの形でピアノとの縁が切れないようですね。
家が狭い、うるさいもネック?
横田:
家が狭いのでピアノは置けないという方もけっこういらっしゃいますよね。
佐久間:
でも、よくお話をお聞きしたりお宅に伺ってみると意外とそうでもなくて、家具の配置や部屋のレイアウトを変えたら置けた…というケースも多いです。
騒音も昔は問題でしたが、今は住宅の気密性が高いし、サイレント機能のあるピアノを選ぶ方も多いので、よほど専門的に長時間弾くということでなければあまり問題にされないようですね。
横田:
ただ、サイレントにも問題がありますよね。中学受験でレッスンを中断していたお子さんが戻ってきたときに、どうも音が弱いんですね。聞いてみると受験中、ピアノを弾く時間が遅くなるのでサイレントで弾いていたと。騒音の問題だけでなく、下手になったのが恥ずかしくて…ということもあったようですが。
ヘッドホンは生音と聞こえ方がまったく違うので、自分の音ではなくなっているんですね。普通に音を出して弾くだけでいいピアノが弾けるのだから、休みの日だけでも昼か音を出して弾くとよかったんですが。
ピアノの寿命・ピアノの価値?
横田:
ピアノをすごくゴチャゴチャと弾くお子さんがいまして、聞くとお母様が30年以上前に使っていたほとんどメンテナンスをしていないピアノを使っているとのことでした。特に小さい子の場合、楽器の状態がよくないと頑張って音を出そうとして、ゴチャゴチャと弾いてしまうようです。
メンテナンスができていないピアノでは、指先での表現がうまくいかないんですよね。ピアノの寿命はどのくらいと考えればいいですか?
佐久間:
消耗品の交換などもして、きちんとメンテナンスすれば「人の一生と同じくらいはもちます」とお答えしています。ちなみに電子ピアノは家電製品と同じで寿命はせいぜい10〜15年ぐらいです。
横田:
大事に使えば一生もつなら、高い買い物とばかりはいえないですね。以前夫の仕事の関係で社宅住まいを始める時にグランドピアノを手放してアップライトを買ったんですが、夫はピアノのことは何も知らない人で、「ピアノって200万ぐらいするのかと思った。車に比べたら安いものだね」って。
佐久間:
ピアノを買うと決めている方はともかく、とりあえず習わせたい…と考えている方のご予算で多いのは20万ぐらい。アップライトで60万円ぐらいからというのが目安ですから、 新品のピアノは難しい。電子ピアノなら家電店やネットで探せば10万円以下で買えますから、とりあえず電子ピアノという選択になってしまうんでしょうか。
中古のアップライトは約20〜40万円台で買えますから、選択肢の1つにはなると思います。ただ、ピアノは値段だけの価値が必ずあります。長い目で見て先行投資ができるかどうかがポイント。お店のスタッフと会話をしてもらえば、必ずピアノのよさがわかってもらえると思うので、ぜひ当店にご来店いただきたいと思います。
横田:
強弱だけでなく、タッチによって限りなく広がる音色…、ワンフレーズで弾く時の音の綺麗さ…。ピアノのよさを指導者ももっと伝えなければいけませんね。

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